ここまで「小説を書き切る」ための基礎やテクニックを段階的に学んできました。
最終回となる今回は、完成した原稿を仕上げるために欠かせない推敲と完成までの流れについて解説します。
執筆を終えて「これで完成!」と思っても、実はまだ作品は未完成です。推敲の過程を経て初めて、読者に届く小説へと仕上がります。
1. 推敲の目的とは?
推敲とは「書いた文章をより良くするために読み直し、修正する作業」です。初稿の段階では、どうしても以下のような問題が残りやすいものです。
- 誤字脱字や表記の揺れ
- 説明不足や説明過多
- 読みにくい文や曖昧な表現
- 矛盾や設定の穴
- テーマが伝わりにくい展開
つまり推敲とは、作品を整え、読者にストレスなく届けるための最終工程なのです。
2. 推敲の基本的な流れ
推敲には順序があります。いきなり細かい誤字を直すより、まずは大きな構造から確認し、段階的に細部へ入る方が効率的です。以下の流れを参考にしてみてください。
ステップ1:全体を通して読む
書き終えたら、まずは最初から最後まで一気に通読します。作者としてではなく「一人の読者」として読み返すことが重要です。このとき、違和感のある部分に印をつけておきましょう。
ステップ2:構成を確認する
物語の流れに矛盾や停滞がないかをチェックします。
- クライマックスまでに無駄なエピソードがないか
- 伏線はきちんと回収されているか
- 主人公の成長や変化が分かりやすいか
構成の見直しは「作品の骨格を整える作業」です。必要なら章ごとの要約を作り、ストーリーの流れを図にして整理すると効果的です。
ステップ3:キャラクターの一貫性を確認
登場人物の言動がブレていないか、急に性格が変わっていないかを見直します。初登場時とラストの姿を比べ、**「成長か、矛盾か」**を明確に判断するのがポイントです。
ステップ4:文体と表現を整える
ここで初めて文章レベルに注目します。
- 読みにくい長文を分割する
- 同じ言い回しが連続していないか確認する
- 比喩や描写が作品の雰囲気に合っているか確認する
声に出して読むと、リズムの悪い文章や不自然な台詞に気づきやすくなります。
ステップ5:誤字脱字・表記揺れを直す
最後に誤字や誤変換、漢字の使い分けなどを徹底的にチェックします。特に人名や地名、造語の表記が統一されているかは必ず確認しましょう。
3. 推敲のテクニック
推敲を効率的に進めるための具体的な方法をいくつか紹介します。
① 時間を置いて読み直す
書き終えた直後は「自分が書いた内容」を強く覚えているため、誤りに気づきにくくなります。数日から一週間ほど寝かせてから読み返すと、客観的にチェックできるようになります。
② 紙に印刷する
画面で読むのと紙で読むのでは感覚が変わります。印刷した原稿に赤ペンで修正を書き込むと、思わぬ気づきが得られます。
③ 音読する
耳で聞くことで、文のリズムや台詞の不自然さに敏感になれます。特に会話シーンの推敲には有効です。
④ 他人に読んでもらう
信頼できる友人や同好の仲間に読んでもらい、率直な感想を聞きましょう。自分では気づけない欠点や、意外な魅力を発見できることがあります。
⑤ ツールを活用する
表記揺れや誤字脱字は、ワープロソフトの校正機能や文章チェックツールを使うと効率的に見つけられます。ただし最終判断は必ず自分の目で行うことが大切です。
4. 完成度を高めるための視点
推敲を進めるとき、特に注意すべき視点を3つ挙げます。
(1)読者の視点
作者が「伝えたつもり」でも、読者に伝わらなければ意味がありません。難解な言葉を避け、描写のバランスを意識しましょう。
(2)作品のテーマ
推敲を繰り返すうちに余計な描写が入り、テーマがぼやけてしまうことがあります。テーマに沿ったシーンを残し、不要な部分は思い切って削る勇気も必要です。
(3)完成品としての形
最終的にどの媒体で発表するのかを考えると、仕上げ方も変わります。
- ネット小説ならテンポ重視
- 書籍化を意識するなら描写や文体を丁寧に
- 公募用なら規定字数やフォーマットに厳密に合わせる
5. 完成までのステップまとめ
小説の完成までの流れを簡潔に整理すると次の通りです。
- 初稿を書き上げる
- 時間を置いて通読する
- 構成・キャラクターを見直す
- 文章表現を磨く
- 誤字脱字を修正する
- 他人の意見を参考にする
- 必要なら再度修正する
- フォーマットを整え、完成
推敲には終わりがありません。ですが「これ以上直すと逆に悪くなる」と感じたときが、完成のサインです。
6. 推敲で得られる成長
推敲は単なる修正作業ではありません。
- 客観的に自分の文章を評価する力
- 読者の視点を想像する力
- 不要な部分を削る決断力
これらは次の作品を書くための実力につながります。推敲を重ねるほど、書き手として確実に成長できるのです。
まとめ
小説は書き上げて終わりではなく、推敲を経て初めて完成します。
- 全体から細部へ段階的に直す
- 読者の視点とテーマを常に意識する
- 時間を置き、音読や印刷、他人の目を活用する
- 完成のサインを見極める
推敲は地味で根気のいる作業ですが、その努力が読者に伝わる一冊を生み出します。ここまで積み重ねてきた物語を、ぜひ最後まで磨き上げ、あなたの「完成作」として世に送り出してください。
これにて「初心者向け小説書き方講座」の連載は最終回となります。ここまで読んでいただいた皆さまが、自分の物語を形にし、推敲を経て完成させる喜びを味わってくださることを願っています。
物語を書く旅はここで終わりではありません。完成させた経験を糧に、次の作品へと進んでください。小説を書くことは、常に新しい出会いと発見の連続なのです。
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